こんにちは。歯科医師の南です。
歯は酸に弱く、酸性度の強い飲食物に長く触れるほど溶けてしまうってご存知ですか?
歯はむし歯菌が関与しなくても、酸に触れる頻度が高まると化学反応を起こして分解し溶けてしまいます。
少し前まで日本では「酸蝕歯」というと、工場の酸性ガスの中で働く方の職業性、または歯が胃酸に触れる逆流性食道炎など、限られた人に起きる病気だと考えられてきました。
一方欧米では、かなり前から飲食による酸触歯の問題が広く認知され、コーラなどの酸性度の強い飲料への警鐘が鳴らされてきました。
というのも欧米では朝食にオレンジジュースを飲み、サラダにドレッシンッグ、グレープフルーツなどもよく食べます。
肉や魚にはレモンを添え、コーラやレモネードを愛飲しワインやカクテルを飲むといった具合に、もともと酸性度の強い飲食物を日常的によく摂るからなのでしょう。
かたや和食で酸性度の強い日常食といえば酢の物ぐらい。
歯が強い酸に触れる機会は比較的少なかったのです。
ただ、現在は少し様相が違ってきています。
欧米型の食生活が世代を超えて定着し、また、酸性度の強い炭酸飲料やスポーツドリンクはいつでも手に入るようになりました。
それに加えて、今や大人から子どもまで、すっぱいものの魅力にとりつかれている感があります。
コンビニの入り口には「すっぱい刺激」が売りのグミや干し梅がズラリと並んでいます。
焼き魚にも肉にもポン酢をかけることが流行し、お酒もチューハイが大人気です。
酸性度の強い飲食物の消費にさらに拍車をかけているのが、健康志向を背景とする習慣です。
ビタミンCいりのドリンク剤、そして黒酢を飲む方もいます。
トクホの酸性度の強い炭酸飲料を継続的に飲んでいる方もおられるでしょう。
継続的な習慣こそ酸蝕歯の最大のリスクです。
食の欧米化、そして清涼飲料水の普及に加え、ポン酢、梅干し、黒酢などを積極的に摂る健康法が浸透している日本でも、そろそろ本格的に酸蝕歯に注目し、警鐘を鳴らすべき時が来ています。
いくらおいしく体によくても、歯がぼろぼろになってしまっては食べる楽しみも、健康の喜びも十分には味わえません。
食習慣の変化とともに、私たちの歯を取り囲む環境は変化しています。
ぜひ、生活習慣病としての「酸蝕歯」にも注意していきましょう。